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2025/5/13
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卒業生の記事が「地域調査とGIS 第16号」(日本地理学会発行) に掲載 |
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卒業生の横須賀玲央さん(地域環境研究専攻・2020年3月卒業)の記事が、(公社)日本地理学会・資格専門委員会発行のニュースレター「地域調査とGIS 第16号」の「地域調査/GIS分析現場」欄に掲載されました。掲載誌の全文は 日本地理学会・資格専門委員会のバックナンバー(16. No.16)よりご覧ください。 GISと地域調査を活用した交通計画の策定 ―データ分析と現地調査の融合による課題解決―
横須賀 玲央(株式会社ゼンリン・地域調査士・GIS学術士) 私は2020年3月に駒澤大学文学部地理学科を卒業し、現在は株式会社ゼンリンのスマートシティ推進部で勤務している。大学ではドローンを活用した研究に取り組み、現在は地域と協働しながらビジネスを創造し、地域課題の解決に向けた取り組みを行っている。 私の主な業務は地図情報を活用したドローン向けのシステムの開発だが、そのほかの業務では、交通課題の分析と計画策定がある。この業務では住民の移動やバスの利用状況を調査しながら、持続可能な交通ネットワークの構築を目指している。この取り組みでは、GIS(地理情報システム)を活用し、データ分析と現場調査を通じて課題解決を図っている。 交通計画の策定は、まず現状分析から始める。交通網や人口分布データを収集し、GISを用いて視覚的に分析する。GISによってバスや電車の路線図と人口分布を重ねることで、交通空白地帯や過剰サービスエリアを特定する。 この分析を基に、地域の交通ニーズや課題を整理し、次の段階で調査を進める。住民の声を聞き、実際の移動状況や課題を把握する。 現地調査では、アンケートやヒアリングを通じて、住民の日常的な移動手段や交通に関する疑問点を把握する。GIS分析だけでは見えにくい側面も調査する。また、朝夕の通勤・通学需要と夜間の閑散時間帯のギャップなど、地域の生活パターンに即した課題も現場調査から浮き彫りになる。データと現場調査を組み合わせることで、より精度の高い課題分析が可能になる。 課題分析の結果を踏まえ、具体的な施策を検討する。たとえば、新しいバス路線の提案や既存路線の最適化、ダイヤ改正などが挙げられる。また、地域の交通需要に応じてデマンド型交通(オンデマンドバスや乗合タクシー)を導入するケースもある。この際、GISを活用することで、人口や利用状況に応じた潜在的な有効性を検証する。さらに、実証実験を行い、試験運用やモニター調査を通じて住民からのフィードバックを収集し、計画をブラッシュアップする。このサイクルを繰り返すことで、地域の特性に即した持続可能な交通網を構築していく。 GISは、交通計画の基本において欠かせないツールである。複数のデータを重ねて分析できるため、交通課題を視覚的に把握しやすくなる。たとえば、利用頻度の高いエリアや移動困難地域を明確に特定できる。また、土地利用データや建物情報を活用して、商業施設や医療機関へのアクセス状況を分析し、消費者の利便性向上を検討できる。シミュレーション分析も可能となり、長期的な視点で計画を立てることができる。 しかし、GIS分析によって得られるデータは暫定的な評価に過ぎない。実際の地域では、道路状況や見通し、社会的背景など、データでは表現しきれない要素が交通課題に影響を与えている。そのため、データ分析と現地調査の両方を行うことが重要である。たとえば、GIS上ではバス停の配置が適切に見えるエリアであっても、実際には坂道が多く高齢者にとってアクセスが困難であることが現場調査から判明することがある。現場に足を運ぶことで初めてわかる課題も多く、データだけでは認識できない点に気づくことができる。 現場調査とGIS分析を組み合わせることで、課題を多角的に捉え、より具体的な解決策につなげることができる。このように地域住民の声を反映しながら、現実的で実行可能な計画を立てることが求められる。特に最近では、MaaS(Mobility as a Service)やAI技術の導入により、交通サービスの効率化や快適性の向上が進んでいる。これにより、さらにスマートな交通計画を実現する可能性が広がっている。 私は今後も、地域とともに課題解決に取り組み、GIS技術と現場調査の両方を活用して、より良い地域づくりを目指していきたいと考えている。特に、持続可能な交通ネットワークの構築や地域のニーズに応じた柔軟な提案を行い、スマートシティの実現に貢献していく。 交通計画は、地域住民の生活を支える重要な基盤である。その計画を成功させるためには、データ分析と現地調査の両輪を活かすことが重要である。今後も、GISと地域調査の融合による課題解決の可能性を追求しながら、より良い未来の創造に向けて取り組んでいく。 図:世田谷区のバス停とコンビニのアクセス圏空白地帯(筆者作成) 本記事は「地域調査とGIS 第16号」(2025年3月15日)掲載記事をウェブ用に加工したものです。 |
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